Vol. 110 礼 

 「礼」の旧字は「禮」。「示」は神様を祭る時に使う台の象形文字。「豊」は神様へのお供え物を盛った器の形を表し、豊かで盛んになるような祈りが込められている。「禮」の字は、「神聖な儀礼」を執り行う情景を描いている。礼は古文の字体で、今日の略字に採用された。

 礼は時代と共に、神との関わりだけでなく、敬意や礼儀作法、決まり事や儀式、お礼の贈り物など人との関係における姿勢を指すようになってゆく。

 現在の礼儀作法が民衆まで広まったのは江戸時代から。それまで、礼儀作法を学んでいたのはある程度階級のある人のみだった。日本で最初に文書で書かれた礼儀作法は、聖徳太子の「十七条の憲法」だといわれている。

 十七条の憲法は当時の貴族や官僚に向けて、和の尊さを説いたもので、そこから、朝廷や貴族、武家などでの行事や儀式などでの礼儀作法、所作が生まれていき、「形」が大切にされていくようになった。

  失礼と無礼にかける味の素  小林茂子