Vol. 122 雫

 「雫―しずく」の音は、どこかはかなげで清らかな響きがある。動詞の「垂ず(しず)」を語源とする説が有力で、意味は「たらす・たれさげる」。動詞「しず」に「く」が付いて、名詞「しずく(しずするもの)」が生まれた。動詞「滴る(したたる)」は「下垂る」が語源。

 「雫」は、雨+下で成り立ち、雨水が下に落ちる「雫」という漢字が生まれた。「雫」の漢字は、万葉時代以降、日本でできた国字。

 「雫」は水のしたたり、雨水を表すため、瑞々しい雰囲気と天の恵みを連想させ、清らかな印象がある。万葉集では、情緒あふれる表現として使われているように、単なる水滴の意味だけではなく、さまざまな文学表現の中で、美しさをあらわす言葉として使われてきた。

 「雫」と「滴」の意味は同じだが、使い方に違いがあり、「滴」は水、点滴、醤油など、さまざまなものに使用されるが、「雫」は、雨や草木に宿る水滴に使われることが多い。

  どう抱けばいいのか雫する楽器  北村幸子