2024年1月

馬と鹿巨大ツリーの前で待つ
おはじきを飛ばす冬の大三角
瑠璃色になればそろそろ終わるだろ

川田由紀子

事始め実寸大の仁王立ち
万国の笑顔が見える望遠鏡
どうぞどうぞと月への道譲る

河村啓子

フォロワーの差は足指の手繰り力
ドミノ倒し2分目頃の駅で待つ
素うどんに星トッピング.com

菊池 京

柚子と山葵真ん中に坂あるかもね
柿と春菊およおよと豆腐来る
山芋すってすってすって薩摩

北川清子

睦月のカレンダー口角を上げて
駅の道 星の話をしてよ君
空回りした夜のアルミ缶ペコリ

黒川佳津子

深眠り銀河をはみ出してばかり
エンゼルの羽透けている冬苺
ガチャガチャのポンと白象淑気満つ

黒田弥生

逆説の助詞に下剤のおすそ分け
グレゴリア聖歌を冬の恥骨から
ねこばばのばばにくちびるなめてみる

河野潤々

変わり目の季節うつろい編みながら
レオタードかりそめごとのホットヨガ
ぽっけから干し芋 手から音沙汰

斉尾くにこ

鮟鱇の飛ばすスキャット配信す
から揚げもちいさな恋もジューシーに
微糖とか微炭酸とか成田発

澤野優美子

ただバカを言うこと月のない夜も
とても古いやり方で網を張る
しばらくはここにいますと月が言う

重森恒雄

本当の恋は落葉になってから
寂しくて隅に集る枯れ落ち葉
未練かな化石になっている落葉

杉山昌善

九人のSuperflyと国家を歌う
呼び捨て希望酔ったLINEも待ってます
鍵盤の半音高いエロいとこ

須藤しんのすけ

白髪の麗子像にもお正月
途中から泣き出す白足袋のこはぜ
鶴亀のお屠蘇につづくおちょぼ口

日に一度ブラックホール確かめる
しばらくはここの隙間に住みつこう
草々で終える梵鐘聞く前に

浪越靖政

ひととせのどこ探してもないボタン
黒鍵はたなびく けむりは奏でる
そうねあれは哀しみ枯れてゆく音ね

西田雅子

結び目をひとつほどいた宵の月
じゅびじゅびと沼の底まで見せあって
回収はやめてまだ要るのよ、命

西山奈津実

雪雲を数え直しているアシカ
差し入れのチョコ鯛焼を待ち受けに
暗転に次ぐ暗転に次ぐ冬菫

芳賀博子

「みんなつらい」にうずもれる致命傷
喉首に切り取り線をそっと引く
心臓に遠く届かぬペンの先

橋元デジタル

瓦屋禅寺喪中はがきの届くころ
やるしかない蛇の抜け殻折りたたむ
額縁が少し歪んで不眠症

林 操

続々と来る来る回送のバスが
あっという間に人生は腹が減り
税金が行ったり来たりするあした

飛伝応

退化とは言わないこれは劣化です
厚化粧が過ぎる公称5千人
私も水も預金も目減りする

平尾正人

毎朝のラジオ体操Eテレビ
急な雪集合場所は天の国
一人旅師走の夕焼けに溶ける

弘津秋の子

私を変えたあなたクミンのようですね
超誤訳だけどそっちに乗ってみよ
新しい年 新しい装置

藤田めぐみ

天皇の両手が触れたことがある
今をすぐ掴むスニーカーの速さ
ミネラルにしてひりひりとしてドラマ

藤山竜骨

元気かなぁ幼い頃の悪太郎
八十年とんと縁無し宝くじ
御仏壇から道外すなと優しい目

堀本のりひろ

菜箸でひょいとつまんでいる殺意
行儀よく並ぶ漢字の林檎達
素潜りで他人の部屋を見てきたよ

真島久美子

人体の不思議こんなとこに海
真空の冬日きのこは洗わずに
人参しりしり踊ろうよチャチャチャ

宮井いずみ

オカリナを吹く息が足りないアルマジロ 
泣いたことない湖で溺死する
思う事一つある日のダージリン

もとこ

コウモリは夜が躍っているかたち
ポケットにおさまるだけの流れ星
まあいいか毎日好きだったまたね

本海万里絵

辻褄が合わない青のポインセチア
セーターの捨てどきネコの拾いどき
まっさらな私をめくるカレンダー

森平洋子

かくまってくれそう銀杏降りそそぐ
ずり落ちた冬を必死で持ち上げる
幽玄を語り尽くして除夜の鐘

山崎夫美子

高級な靴には住所氏名書く
ワクチン七回孫六人 起立
「三丁目の夕日」ミゼット懐かしい

吉田利秋

手のひらに降り積もる白い邂逅
赤い毛糸買い込む備えよし還暦
カッサで流しきる2023

四ツ屋いずみ

ズッキーニなかなか覚えられなくて
誰からも連絡はない 日は暮れる
はるかの向日葵木枯らしの中咲いている

渡辺かおる

夕焼けの雪野に遊ぶ謎あまた
残菊の彩たくましきおもてなし
ゆっくりと曲がって影の吹きだまり

吾亦紅

義士の日や暗闇ジムで流す汗
小春日のサリサリとあり象の皺
生きることいつもよそ見のしぐれ雨

阿川マサコ

あの日の私 静止画像にして探す
ジングルベルうきうきしない影もいる
ブギウギのリズムでゆくか枯野道

浅井ゆず

腹パンチさせてよ君は幼馴じみ
愛探すアルゼンチン帰りの婿夫婦
君はもうやはり帰るか月へ星へ

朝倉晴美

正月の空っぽ埋まるカレーパン
ハンバーグ食べ終えてから来たライス
弦月のバランス崩す赤ワイン

石野りこ

愛された記憶小脇に一周忌
思い出はプラスチックに変えました
一周忌汚した記憶磨き出す

伊藤聖子

ニンジンの赤い目線が僕を刺す
ゆったりと大根を煮る貨物駅
何色に染まるだろうかサツマイモ

伊藤良彦

薔薇を買い敗北感を覆う夜
温そうな隙間に鵺の目が光る
卓袱台におはぎと緑茶ある平和

稲葉良岩

字余りの黄色い春をくださいな
満腹です13色もたばねたら
鈍色のレールをすすむ台所

岩田多佳子

クリスマスはおまけの時間夢をみる
冬苺まだまだ甘くなる余生
別れたと口角あげて笑いつつ

海野エリー

オルゴール開けたら山茶花咲きました
木枯らしを捕まえましたレジ袋
オリオンの形にビップエレキバン

おおさわほてる

北側の斜面で待てという指令
グリーンカレー負ける気がしないのです
全身で突っ込んでゆくマリメッコ

小原由佳

胸奥にぽつんと灯る烏瓜
裁かれているのか星が青すぎる
三日月の顎に自転車ひっかかる

笠嶋恵美子

会員作品を読む 2024年1月 芳賀博子

第30回会員作品から

続きを読む‥