Vol. 145 黄

 黄色の「黄」は、平安時代以降に単独の色として確立したと考えられている。奈良時代には、「黄」は「赤」の範囲に含まれていたようだ。

 黄(き)の語源には、多くの説があり、奈良時代には「黄金」は「くがね」と読まれ、母音が変化して「く」が「き」と読まれたことから、「きん(金)」を語源とする説。

 また、草木染めなどから出た言葉として、「木(き)」を語源とする説。落葉樹の「木(き)」の意味からなどの説が有力と考えられる。

 「黄」の字は、2つの成り立ちがあり、1つは、火をつけて飛ばす矢=火矢の形から作られたというもの。火をつけて飛んでいく矢の光から「きいろ」の意味となった。

 もう1つは、古代の人々が腰のベルトに吊り下げた飾りの玉の形からというもの。玉の組み合わせが「黄」の字形となり、その吊り下げた玉の淡い飴色が黄色とされた。

 黄色のイメージから、古代日本の人々は黄色い花が咲くところには、あの世への入り口があると考えていた。「黄色い泉」と書いて「黄泉の国(あの世)」への入り口。

 また中国では、「黄門」という天子の住む宮殿の門に象徴されるように、黄色は中央の色、すべての中心にある色と考えられていた。

  菜の花の中の激しい黄を探す  石部 明