今日の一句 #643

日にかざす新しい説古い説
若林よしえ


日にかざす、ときて、新しい説古い説。
どちらかではなく、両方とも
「ほんまかいな」とお日様へ向けて
しげしげ透かし見ている風なのが可笑しい。


ごく身近な通説のみならず、
教科書に掲載されてきたような事実、史実も
資料の新発見や科学技術の進歩で
いきなり覆ったり更新されたりで
そのスピードも目まぐるしい。


ところで先日、句会後のお茶タイムで吟行企画の話になった。
ちょっと遠出もいいかもですね、
なんて候補先を出し合っていると、ある先輩が、
「1泊で、福井の恐竜館なんてどうでしょう」
え?
「実は私、子どもの頃からずっと恐竜ファンなのよ」


曰く、近年の
ティラノサウルスに羽毛が生えていた説には
すごくびっくり、且つ感動されたそうだ。
NHKスペシャルでもオンエアされた
羽毛ティラノのCG画像に

まるで子どものようにワクワクし、
以来ますます、恐竜推しになったとか。


確かに私もその新説にはときめいた。
そしてそれ以上に
「まだまだ何もわかっていないんだ」
ということにときめいたかも。


すると、先輩は我が意を得たりとばかりにニッコリと、
「でしょう? 
 これから何がわかるかもわからなくて、
 だから私、長生きしたいのよ」


(季刊「現代川柳 かもめ舎」第61号
 かもめ舎 2024年4月)

   

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