今日の一句 #497

辛かっただけのカレーの店を出る  德永政二


日記のような一句であるけれど
日記ならこんな書き方はしない。

「店を出る」
その瞬間を現在形で切り取って、
読み手をひょいと現場へ引き込む。

昼飯どき、出先で立ち寄ったカレー専門店だろうか。
カレーの店、とちょっと期待させた割には
ただ辛いだけのひと皿。
おまけにどっと噴き出してくる汗を拭いつつ

黙々とたいらげ、
ともあれ腹は満たして、
会計を済ませ、
店を出たその瞬間の、
かっと照りつける日差し。

と、一連の流れを映像で再現しながら
思わず、ああ、ご同輩、とうなずく。

人生のほんの一コマに醸し出される
可笑しみやペーソスが

淡々と味わい深く、
作者の代表作のひとつ。


(川柳作家ベストコレクション『犬小屋の中に入ってゆく鎖』
 德永政二/新葉館出版)


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