永き世の二段ベッドの下の段
樋口由紀子
下の段と上の段。
まず、私ならどちらを選ぶだろうと思った。
誰かとじゃんけんで決めるとして
もし勝ったら?
さて掲句、「下の段」が、とんと下五に置かれている。
うれしいとも、しぶしぶとも書かれていないし、
そう単純なものでもないのだろう。
下の段は湿気も多そうだし、
見あげればすぐ板。
でも、相性というものもあって、
いつしかどこより落ち着いて、
誰にも邪魔されず、ぬくぬくと
夢や想像を無限に広げてくれる
大切なマイスペースになっているような。
「永き世」と「下の段」が
シンボリックに響き合って
さまざまなイメージが交差し、
人生やら、さらには川柳という
げに面白く底知れぬジャンルにまで
深読みがいたる。
二段ベッドのキシキシ、ギシギシもまた
永き世の愛しき音。
私も下の段がいい。
(「晴」第8号/編集発行人 樋口由紀子 2025年4月)
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