「鎮守の森に伝承されてきた
相互敬愛の祈りこそ、人類平和の鍵である」
日本文化から平和をひもとく圧巻の講演でした。
10月18日(土)、京都の石清水八幡宮の権宮司、田中朋清さんをお迎えし、第10回ゆにゼミを開催しました。田中さんは由緒ある神社で神事を司る一方、学術研究者として国際連合などで日本伝統の平和の智慧を世界に発信していらっしゃいます。そうした経験を踏まえ、「人類平和と日本思想」と題して講演してくださいました。
まず、神道の本質的な考え方から。古代の人々は森羅万象に神が宿ると信じ、各地にたくさんの神様がおられました。これが古神道です。やがて、縄文後期から弥生時代にかけて、今日のような鎮守の森と神社の形ができ上がり、人々は地域共同体の平安と安寧を祈りました。その後、大陸から仏教が伝わると、「仏法を信じ、神道を尊ぶ」という考え方の「神仏習合」が生まれました。しかし、明治に入ると「神仏分離」が打ち出されます。また、神社合祀政策により全国の神社は大幅に削減され、鎮守の森に受け継がれてきた、万物への畏敬や先祖への感謝、お互いの幸せを願い合う祭りやコミュニティが衰退していきました。しかしながら今日、アニメブームなどにより、鎮守の森や地域文化を再評価する声が高まっています。相互敬愛の祈りは日本思想の根源であり、平和を実現する人類普遍的な智慧でもあります。全人類があらゆる多様性を超えてお互いの幸せや平安を願い合い、祈り合える関係性を構築していく。その鍵を握っているのは日本の愛情あふれる智慧であり、その重要性をこれからも世界へ発信し、世界中の子どもたちにも学んでほしいと、田中先生は締めくくられました。
熱のこもったお話に圧倒されつつ、日本伝統の智慧や人類平和のために日本ができることに思いを馳せるひとときでした。