Vol. 9 ゼッケン

 今では「ビブス」と言われる方が多い「ゼッケン」。小学生のとき、ゼッケンを体操服につける宿題があった。ゼッケンとなる布に赤いマジックで数字を描いて、数字を赤く(男子は黒く)塗りつぶす。次に、バランスよく体操服の生地に縫いつけるのだが、これがなかなかたいへんで、下過ぎたり、斜めになったりで、何度もつけ直し…でき上ったゼッケンをつけた体操服は、すでにヨレヨレに。

 英語の「ビブス」は、bib(よだれ掛け、胸当て)から来ているが、なにやら勇ましい響きの「ゼッケン」はドイツ語由来の日本語。明治44年、陸上競技オリンピック予備会では、「番号票」と呼ばれていた。翌年には「ゼッケン」と記録されていて、ドイツ語の 「覆う」Decken(デッケン)、あるいは、「目印」を意味する「Zeichen(ツァイヒェン)」の綴りをローマ字読みしたものから転訛したものとも言われている。

 今ではスポーツのユニフォームだけでなく、災害時に職種や担当の識別にも用いられているゼッケン、いえビブス。

 小学生のときに作った私のゼッケン。実は何のためにゼッケンをつくったのかは覚えていないが、他の生徒に比べて、塗りつぶしたはずの赤い色もまだらで、斜めにつけられたゼッケンを早く外したかったことを覚えている。

  ゼッケンをつけてこの世を走り切る  青砥たかこ