Vol. 194 紙

「紙」という漢字は、紙発祥の地である中国で生まれた。中国最古の辞書(字書)といわれる『説文解字』(西暦100年成立)によれば、「紙は絮(じょ)の一苫(せん)なり」とあり、「絮」=屑綿を漉きとり、「苫」=簀(すのこ)の上にすくい上げて乾かしたものとされる。

「紙」の糸へんは蚕の繭からできた象形で、つくりの「氏」は、匙のかたちをした象形。薄く平らにのばすことを表し、滑らかという意味もある。

「紙」という字には紙の作り方、原料の古繭、でき上がったものの形すべてが盛りこまれている。

読み方の「かみ」は、紙の前の段階の書写の材料であった木簡(もくかん)、竹簡(ちくかん)の「簡(かん)」の音が転化したとされる説が有力。

今日の紙に最も近いものは紀元前3000~2500年頃、エジプトのナイル河畔に生育するパピルス草と呼ばれる葦に似た植物の繊維から作られ、英語のpaperの語源となったパピルス(Papyrus)である。

 妖精が剥がす空室有りの紙  青砥和子