「我」は象形文字で、漢字の左側は、鋭くギザギザした「ノコギリ」の刃を表し、右側は「戈(ほこ)」という字。戦のときに敵を斬るだけでなく、神への供えものにする羊の肉を切る道具でもあった。つまり「我(われ・ガ)」とは、「ノコギリ」と「戈(ほこ)」というふたつの武器をあわせた漢字。
「わたし」という意味を表す「我」は、音声的にたまたま「ノコギリ」という道具を意味することばと同じ(あるいは非常に近い)発音だったので、ノコギリの象形文字だった「我」を、「わたし」を意味する文字としても使うようになった。
古代中国の権力者たちは、民衆の心に芽生える「自我」は国家統一の妨げになると考えていた。武器を意味する「我」をふりかざしていいのは、神に祈りを捧げる儀式や、我が国の領土を守る戦いのときだけ。
ふだんは無用な争いを招かぬよう、大切にしまっておくように……。そんな戒めがこめられている漢字が、武器を描いた「我」という文字だったとも。
印象は走る 我より疾く出て 城崎ララ

