物心ついた頃は、庭に椿があって、春になるとピンクの花を咲かせ、バサッ、バサッと音を立てて、地面に落ちていた。祖母が、朝と夕、掃き集めていたっけ。
椿の葉は冬でも枯れず、青々としているので、「強葉木(つばき)」「艶葉木(つやはき)」と呼ばれ、それが転じて「ツバキ」になったという説がある。
また、葉が厚めであることから「厚葉木(あつばぎ)」と呼ばれたのが転じたという説も。いずれにしても、美しい花がありながら、葉に注目された名前というのは意外である。
生命力あふれるその姿から、古来より神聖な植物として崇められ、常に緑の葉をたたえることから長寿の木とされてきた。不老不死の薬として椿油は献上品として海を渡り、平安の高貴な人々はその油を整髪料として使った。
一方で、花ごとぽとりと落ちるので、武士からは首が切り落とされたようで不吉だと、忌み嫌われた椿。
祖母が亡くなったあとは、母が朝夕、落ち椿を掃いていたが、剪定が適切でなかったのか、いつの間にか花は咲かず、つやつやと緑の葉だけの木になっている。
絶叫の固まっている椿の美 木本朱夏