最近では、「背広」とは言わず、「スーツ」と言うことの方が、圧倒的に多い。背広とは、上着と共布のスラックスからなる一揃いの男性用のスーツのことだが、背広の語源については、諸説あり、外国語の音をあらわすための当て字という説と、意味に由来する命名とする説がある。今では、前者の説の方が有力。
英国ロンドンの高級紳士服店街「サヴィル・ロウ」(セビルロー)から変化したとする説や、市民服を意味する「civil clothes」や「civil wear」から変化したとする説、「背部(背の布パーツ)が広い服」の意味からきたという説もある。
もともとは、ヨーロッパで日常着であった膝丈のフロットコートを、くつろげるように腰丈にしたものが始まりで、ズボンやベストも揃った三つ揃いの背広は、アメリカでビジネス用に用いられたものが、世界へと広まっていった。
日本では、幕末から明治初期にかけて「セビロ」というカタカナ表記が見られるようになったが、ステレオタイプな画一的な服装として、社会の規律を意味する度合いが高く、「退屈な服装」とも言われている。
静かなる吊りの背広や雨の森 きゅういち