ヨーロッパでは、ナイフ、スプーン、フォークに代表される食器たちがセットで出されるようになる前までは、「指は神様が与えた優れた道具である」という宗教観から、手を使って食事をしていた。
西欧でスプーンがスープを飲むために食卓に登場したのは14、15世紀だったが、上流階級に限られていた。庶民がスプーンを使うようになるのは17~18世紀頃。キリスト教で子どもが生まれると、洗礼の際にスプーンを贈るという習慣があったため。
もともと西欧にはフォークというものはなく、肉を食べるときに2本のナイフを使っていた。これがとても切りにくくて、2本歯のフォークが考え出された。ちなみに、フォーク(fork)の元はラテン語で「熊手」を意味する「furca」からきているそうである。
2本の歯でも使いにくいことから、3本に。このころ、庶民の間ではまだ手づかみで食事をしていた。3本から4本歯となり、使いやすくなったフォークが庶民の間でも使われるようになったのは17,18世紀になってからである。
パスタをスプーンで受けながら、くるくるとフォークできれいに巻いて口元までもってゆく一連の優雅な所作は、不器用な私にとってあこがれである。
雨になるフォークなんかで掬うから 菊池 京