Vol. 96 蝶

 蝶は、「虫」と「枼」を組み合わせた漢字。頭が大きいまむしの象形の「虫」と、薄くて平たい木の葉の象形「枼」を合わせて、翅が薄くひらひら飛ぶ虫=蝶 となった。当時の中国では、蝶を指す言葉の発音と、「枼」の発音が同じだったため、蝶という漢字になったらしい。

 日本古来の呼称は、カハヒラコであったが、平安時代には「テフ(チョウ)」と呼ばれていた。蝶の別名には、ほかに胡蝶、夢虫、カワビラコ、バタフライ、パピヨン、てこな、てがら、てんがらこ、などがある。

 ハエ、ハチ、バッタ、トンボ、セミなど多くの虫の名称が大和言葉であるのに対し、蝶と蛾に関しては中国からの漢語である。

 また、蝶の正確な数え方は「匹」ではなく、「頭」。西洋の動物園での数え方が定着したという由来がある。西洋の動物園では、飼育している動物や昆虫を特に区別せず、すべて「head」という単位で数えていた。そのため、昆虫学者たちの間で論文などでも、蝶を数える単位として head が使われるようになった。日本語に直して、head=頭 。

  蝶沈む 葱畠には私小説  墨 作二郎