インクは「インキ」という表記もあり、明治期によく使われたが、やがて「インク」が一般化。技術用語としては現代でも「インキ」は正式に使われる。
インクは英語でink。もともとは古いフランス語のenqueで「ものを書く液体」という意味。これをたどるとギリシャ語のegkauston に行きつき、地中海に生息する巻貝からとった紫色の染料を意味していると言われている。
日本の歴史から見ると、中国から伝わった日本の書道は筆と墨の文化だったため、文字を書くためのインクとして使われたのはかなり遅くなる。
江戸時代末期の1848年、オランダ船が積んできた西洋の活版機材をもとに活字版摺立所が設立されたのが、日本の印刷の起源といわれている。オランダ語でインクは「inkt」で、その発音は「インキ」に近かったようだ。
今、万年筆の色インクに熱中する人たちがいる。多くの色インクを集め、手帳や手紙にと何色もの色を使い分ける。「インク沼に沈む」というらしい。このインク熱は数年前から始まり、地域名を冠したご当地インクも登場。メーカーも微妙な色合いのインクを次々と開発している。
おっとそれは飲めない インクである 河野春三