Vol. 104 檸 檬

 レモンを漢字で書くと「檸檬」。読めても書くのはなかなか難しい漢字の一つではないだろうか。英語のlemonを中国語で音訳すると「檸檬(ネイモウ)」となる。

 レモンはインド・ヒマラヤ地方が原産で、10世紀頃に中国、アラビア半島に伝わり、12世紀頃にスペインに。十字軍がヨーロッパに広めて、日本には明治時代に伝わった。

 このことから、レモンはヒンズー語 limbu → アラビア語 laimun,limun → ラテン語 limo → フランス語、スペイン語 limon → 英語 lemon となって広まってゆく。

 檸檬(ネイモウ、ドウモウ)というのは中国の生薬名で、そこに英語のlemonの音を当てて「檸檬=レモン」になった。「ネイモウ」という響きが「レモン」に似ていたから当て字にちょうど良かったのでは。

 梶井基次郎の小説で有名な「檸檬」。丸善の書棚に置かれた鮮やかなレモンイエローのレモンが印象的で、「檸檬」のほかにぴったりな当て字はなさそう。

  そこじゃないところに檸檬しぼるひと  米山明日歌