今日の一句 #601

去年の私ではないハイビスカス咲いた
時実新子


去年の私ではない、私。
そんなシン私を体現するようなハイビスカスだ。
華やかな熱帯花は、きっと
これまでの自分とは対極にあるようなイメージなんだろう。


一方、このいささか唐突なハイビスカスや、
「ない」「咲いた」のきっぱりとした言い切りは、
むしろ反語のように、
まだ吹っ切れない主人公の屈託を物語ってもいるよう。

それでも前を向く、向こうとしているのか。

ここで少し作者に寄せた読みをすると、
実際、時実新子作品にハイビスカスが登場するのは
極めて珍しい。
たとえば『時実新子全句集 1955~1998』(大功社 1999)に
薔薇や椿が詠まれた作品はそれこそ40句、50句とあるのに
ハイビスカスはたった1句、
という意味でも、なかなかユニークな作品。


(句集『有夫恋』 時実新子/朝日新聞社 1987)

 
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第2部 川柳句会          

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