Vol. 125 乗る

 乗りものの歴史は、動物や自然を利用することで始まる。紀元前1万年頃の船の原型となるものとして、丸太や木の枝を束ねただけの簡素な「いかだ」がある。水に浮かべて人力で移動して魚を捕っていたという。風の力を使う帆のついた船ができるのは、かなり後の紀元前3000年頃。

 また、陸上では紀元前5000年頃から荷物を運ぶ方法として、ロバなどの動物が使われるようになっていた。

 もともと「乗」という字は、二人が木の上に登っている形で、木に登ることを意味していた。のちに、「両手両足を開いた人」の象形と「両足を開いた」象形と「木」の象形から、木に磔になって乗せられた人を意味するようになった。

 人が乗りものに求めること、それは、「より速く、より遠くへ、よりたくさん運ぶ」こと。乗りものの進歩で、それまでに行ったことがないところに行き、見たことがないものを見ること、触れることができるようになる。

  ここからはひとりで雲に乗るんだよ  柴田美都