命より大事な前髪にサクラ
真島 芽
ああ、いいなあ、と微笑してのち、遠い目になる。
その目をうーんと細めてみれば
確かに私にも、前髪が命より大事な頃がありました。。
前髪が命より大事、なのは
いわゆる思春期の限られた時間。
その後、就職や進学をすれば
メークやファッションで
いくらでもお洒落ができる、できてしまう。
今、許される精いっぱいのお洒落で自己表現。
そんな前髪のつやつやに
さらりと、はっと、サクラを取り合わせた本作。
桜を「サクラ」とカタカナ表記にし、
句のおしまいに置いたことで
軽やかにして余韻深い作品になっている。
クラス替えや卒業など、さまざまな別れの中に、
もしかして憧れの先輩もいただろうか。
春の繊細な揺らぎが印象的な本作の作者は
まさに高校2年生。
スカートを折ると十七歳になる
美術部の端くれとしてバンクシー
出典は先月発行された
川柳誌「川柳の話」第4号で、
真島芽氏も、姉・凉氏とともに本誌の会員。
やりきった顔は泥人形のほう 真島久美子
大吟醸底を覗けば二重丸 うつわ
氷砂糖いよいよ境界と揺れて 福士かれん
靴紐は保護色にする出勤日 真島 凉
蝶という空をなぞればゆうらしあ 月波与生
発行人は月波与生氏、編集人は真島久美子氏で、
この4号より会員制に移行とのこと。
会員による川柳以外にも、
エッセイや鑑賞、書評の寄稿など
多彩なメニューで構成され、年2回発行。
お問い合わせはこちらまで。
tukinamiyojyo@gmail.com (月波与生)
(「川柳の話」第4号 満天の星社 2024.2)
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