今日の一句 #708

なげるなといふは涼の角力なり
古川柳


なげるなといふはすずみのすもうなり。
本作は江戸へさかのぼって、

誹風柳多留七篇からの一句です。
つまりは、涼みながら若い衆らが
角力のまねごとをして戯れているというもの。


ハハハ。
もう少しくわしい注釈を
現代教養文庫『誹風柳多留』シリーズ(西原亮 校注)より引くと
「暑い夏の夜。
 夕涼みの若い者が集まって、
 座興に俵や石を持ち上げたり、角力などをする。
 投げるのが角力であるが、
 汚れるから投げるなという冗談半分の角力で、
 汗も出さない程度なのである。」


いや、なんとも可笑しみある楽しい句で、
私も一読、時代をワープして
取り巻きの一人になりましたよ。


もっとも、こうも地球沸騰化が進んでしまい、
夕涼みや縁涼みなど「涼」のもろもろは、
とうに、今は昔、なのかもしれません。
それでも、気のおけない者らで
暑さをしのぎながら
くだらないことで笑いあったり遊んだり、
そんな開放感のひとときは

令和の今も、きっと根っこは変わらず
夏のお愉しみですね。


(『誹風柳多留 七篇』
濱田義一郎・佐藤要人 監修 西原亮 校注
社会思想社 現代教養文庫 1987)

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