2025年9月

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平仮名のぽから風船とびだして
机ふさぐ箱潰したのは誰だ

宮井いずみ

手ぶらだがいい予感する方へ行け
ぎゃーぎゃーと線香花火するとはね
こんなにも大好きわけがわからない

本海万里絵

遠い日を時計の針で縫い直す
プールから上がる錨は置いてきた
やじろべえ明日のことはまた明日

森平洋子

忘れてた亡母の三十三回忌
八月は痛い悲しいことばかり
元気を出そう百日紅見上げてる

森 廣子

人力車ゆく炎天の狂詩曲
向日葵の海を泳いで逃避中
結び目の四個目だけがかたくなで

山崎夫美子

その昔席譲るのが趣味だった
お二人から席譲られた夏のバス
友だちから杖を持てばと勧められ

吉田利秋

情熱の切れ端だって旗にする
三文以上 明けの金星と木星
氷ふくみ「立秋」と言う2度下がる

四ツ屋いずみ

盆休み帰省の犬と戯れる
おうち避暑メジャー阪神甲子園
万博は一度行ったらまあいいや

渡辺かおる

二駅を過ぎると勿忘草の風
朝を待つしずくひとつぶ花はこべ
ホケホケと蒲公英ヶ原の大散華

吾亦紅

薄暗がりに分け入ってゆくキャピキャピと
ジャングルで寝落ちをしてはいけません
ハローハロー盆明けのそら呼んでいる

浅井ゆず

明石鯛上手く焼けをり別離の日
しみじみとオクラの断面今日出立
進展をしないから好き君と君

朝倉晴美

兜山を皿に乗せたのだれですか
背もたれのレバーを探す市章山
摩耶山と星を掬って来たところ

石野りこ

八月の引っ越しというダイエット
生きていくための転勤だとしても
命って洗濯できるものですね

伊藤良彦

ひとり旅ゴールで地図が舌を噛む
駆け抜けた胡瓜の馬の首に汗
嫣然と微笑む魔女の凌霄花

稲葉良岩

満腹になりおわる音楽
家事をつらねて空を駆けてる
回廊の出口までには淹れおわる

岩田多佳子

しあわせの公約数かも許すって
それぞれに生きぬくためのア・ラ・カルト
スキップが上手になって座る席

海野エリー

怪談はミントチョコから始まって
お嬢さんホタルブクロは休館日
肺のレントゲン満開のサルスベリ

大竹明日香

湿り気を足してお詫びをしたつもり
入り口にサイコロあみだルーレット
関節の撫でたところが休日に

小原由佳

エンディングノートに挟む花の種
黙祷の間も蟻は行進する
鉛筆を削り直して終戦日

笠嶋恵美子

空っぽになって見ていた航跡波
神さまの香りを辿り森をゆく
もういいだろうとタチアオイが笑う

桂 晶月

くす玉のように雨雲ポンと割れ
しゃあないと姉もだんだん薄くなる  
蝙蝠が横切っていく下半期

川田由紀子

平和とは虫歯の穴の大きさよ
頷いてあの夏ひとつ飲み込んで
蓮の実のくちぐち叫ぶ反戦歌

河村啓子

きみが大人になっていく 空に雲
夏休み家が散らかってなんかしあわせ
帰ったら金魚が死んでた明日は木曜日

寒雷

目論見はみごとにハズレ個包装
文字起こし思想わずかに誤変換
一途に語り継ぐ枝豆の塩加減

菊池 京

鼓笛隊やって来て南瓜のプリンやって来て
無花果のタルト焼けます話してくれませんか
駅でお迎え桃のムースだったら

北川清子

家族ってカップケーキのトッピング
夾竹桃の猛々しさにたじろぐ日
噓だって言うなら見せる刀傷

黒川佳津子

楔形文字から組み立てる晩夏
天金の詩集を読み耽る紙魚と
サーカス来たる 秋のベンチを引き寄せて

黒田弥生

若者と死を炭酸で割る
鳴門巻き食べ終えておとなの時間
点と線ドン・キホーテはご懐妊

河野潤々

風はらむカーテンとなる備忘録
数日は湖畔にときにパラソルに
つながりの尊さ透明なドラマ

斉尾くにこ

草はぼうぼう恥ずかしいことをする
雨が降ったところで枯れてゆく舟
草むらへ消えてゆく虹色の翅

重森恒雄

現住所「花の名前」を書いておく    
門限の父乗り越えて帰る家      
カタカナを脱いで今宵はひらがなに

杉山昌善

傷だらけの腕は三日月宛ですか
つくづくとつきのわぐまを待つ月夜
どこまでもきんもくせいのよるだった

たかすかまさゆき

熱波師が水銀計を煽ってる
膀胱に往生際の悪い夏
冥界を追放された流れ星

浪越靖政

チロルリボンほどけ晩夏のひとすじに
くるくると小皿に載ってくる諸説
瞳の奥で熟成されてゆく言葉

西田雅子

マルボロで言葉焼いていく遊び
だから手垢つけちゃダメその黄色
脱皮するようにはサヨナラは消えぬ

西山奈津実

まちがえて口笛ふいたひとの列
馬のころ見た海のこと話させて
たてがみが抜けるわたし自由になる

温水ふみ

黒ぶどう敵失であれ何であれ
胸の内にも落書の消え残り
鶏頭がずっとゾーンに入っている

芳賀博子

戦火くぐり抜けてきてパンが無い
裾からげて格子戸くぐり抜けるなり
三角くじをつくづく下手な破き様

飛伝応

悪いことした手で割っているタマゴ
どう死ぬかよりどう生きるかを思う
戸惑いの種が撒き散らされた道

平尾正人

第二の故郷 長岡大花火
影法師ゆらゆら頼りなきワタシ
夕暮れや歌う喜びホーホケキョ

弘津秋の子

ごつい手を添えて婆さん丸洗い
階段を降りる玉虫色の膝
楽しい嘘と悲しい嘘にあるゲーム

藤山竜骨

三十路の頃ポマード塗ってかっこつけ
札束でホッペ撫でられ腰砕け
尖った気分酒一杯で泡と消え

堀本のりひろ

湯治場の浴衣の帯とうすい下駄
たこ焼きののの字のの字の夏祭り
ちりちりと恋も背中も火照らせる

峯島 妙

会員作品を読む 2025年9月 西田雅子

第49回会員作品から

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