Vol. 231 メルヘン

現実世界に空想が入り込んだ短い物語が「メルヘン」。動物が話したり、魔法が用いられたりする奇異性が本質ともされているが、「メルヘン」と聞いて、漠然と西洋のおとぎ話のようなもの、かわいらしいものをイメージする人は多い。

メルヘンの原点は、古代エジプト新大国時代(紀元前15世紀から紀元前10世紀頃の古代エジプト文明が最も栄えた時代)の、メルヘンの本質が備えられた説話にまで遡る。

「メルヘン」の語源は中世ドイツ語の “ mære(知らせ・出来事の報)” に遡り、15世紀には短い語り物 “ Mär ” が成立し、これに小詞 “ chen ” がついて “ Märchen ” となった。

18世紀にはフランスの妖精物語や『千夜一夜物語』がドイツ語化され、この語が一般化する。

グリム兄弟が編纂したドイツのグリム童話集(「赤ずきんちゃん」「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」等)はメルヘンの代表例とされるが、後世に向かうほど残酷描写が削られ、メルヘンは「子ども向けのかわいらしい話」というイメージが強まった。
  
 缶きって海のメルヘン皿に盛る 落合魯忠