Vol. 38 餡 子

 朝ドラで「おいしゅうな~れ、おいしゅうな~れ」と唱えながら、あんこをつくる場面がある。おはぎや回転焼きとなって登場するが、つややかに光っているあんこはいかにも美味しそう。

 あんこの名前の由来は、一説では魚の「あんこう」からきていると言われている。海底の奥深くで口をあけたまま、ひたすら待っているあんこう。それが「あんこ」を入れる仕事の姿と類似しているからとのこと。本来の「あんこ(餡子)」の意味は「詰め物」である。

 弥生時代より、日本では無病息災や魔除けを祈願する行事に小豆を使った料理が食べられていた。遣唐使から「団喜(だんき)」という肉団子が伝わり、日本では僧侶は肉を食べないので、かわりに小豆のあんをつかったのがきっかけだそうである。

 当時はまだ塩味のものが主流で、砂糖で甘味をつけ、現在に近い形で食べられるようになったのは室町時代のこと。甘いあんこが庶民の口に入るようになったのは、江戸時代になる。

 本日、バレンタインデー。今は、チョコよりあんこな気分。

  はみ出してどこへ行こうとする餡子  樋口由紀子