Vol. 28 手 帳

 年々、種類も華やかさも増す文具店や書店の手帳コーナー。パソコンやスマホの普及で、スケジュールをデジタル管理する人も増えているが、紙の手帳の人気は衰えず、かく言う私も手帳派。

 最初の日本の手帳は、豊臣秀吉の時代に役人が農地の検地に携行した「野帳(のちょう)」と言われていて、手帳と呼んだ。また、俳諧師や戯作者などが手もとに置いて、書き込む帳面も手帳と呼んでいた。

 海外から手帳が入ってきたのは、欧州使節団の一行に加わった福沢諭吉がパリで購入して持ち帰った『西航手帳』がルーツと言われている。

 日本での手帳の歴史は、明治元年の警察手帳に始まり、明治13年の銀行の社名入り手帳が民間初の手帳。贈答用にも配られている手帳だ。

 バブル期には、機能性のあるシステム手帳がイギリスから入りブームに。その後も、種類も豊富に、工夫されて、より自由に使いやすくなった手帳。

 私の場合、予定とその日のちょっとした記録が書き込めるだけで十分。変わり映えのしない毎日だが、たった1、2行のその日のできごとの記録が、おおげさだが、その日私が存在していた証になるような気がする。

  月の出の時刻が書いてある手帳  峯 裕見子