高校のとき、いつも本を読んでいる同級生がいた。彼女は、本でパンパンにはち切れそうなカバンを持って通っていた。教科書は学校に置いて、図書室で借りた本をカバンいっぱいに詰めていたらしい。その後、図書室の本は全部読み終わり、街の図書館で借りていたとか。
日本の図書館の起源は、奈良時代の図書寮や、有力貴族の邸宅内に造られた文庫と言われているが、ごく一部の限られた人だけが利用するものだった。
図書館は、明治時代に、地図(図版)の「図」と書籍の「書」を取って、図書とし、図書を「保存」する建物という意味であった。
近代的な欧米の図書館制度を日本に最初に紹介したのは、福沢諭吉である。幕末に渡欧した福沢は、著書『西洋事情』の中で諸外国の納本制度を報告。それを参考に、初の国による近代的図書館がつくられた。
今ではカフェや書店を併設する図書館もある。学校の図書室は、あのときと変わらないままなのだろうか。あの同級生のように、肩が傾くほど本をカバンいっぱいに詰めて通う学生は、今もいるのだろうか。
図書室の椅子になりたい観覧車 小沢 史