Vol. 40 切 手

 子供の頃、趣味としてブームだった記念切手収集。記念切手が発売される日は、郵便局で1シート毎買っていた。ブームは時の流れとともに去り、当時集めた切手は、引っ越しの度に引き出しの奥に入れられたままである。

 切手という言葉は、もともと切符手形(きりふてがた)と同義で、 金銭受け取りの証拠となる書き付けや金券を意味したもので、小切手もその名残のひとつ。

 江戸時代には、酒切手や米切手、 鰻切手などと呼ばれるクーポン券が存在したほか、 藩札(当時の紙幣)のことを切手と呼ぶこともあり、 切手という言葉は一般的に使われていた。

 イギリスの郵便制度をならった日本の近代郵便制度の創始者である前島密が、郵便料金の前払い証明としての郵便切手を「切手」とした。

 さて、大量の古い記念切手の使い道を調べて見ると、ゆうパックに使えば一度に捌けるとのこと。けれど、美しい切手を前にすると、もったいなくて、また引き出しの奥へしまってしまう。

  夕暮れの寺院のように貼る切手  石部 明