第4回「ゆにゼミ」レポート

時代が大きく変化する中での「五七五の今」、

また俳句と川柳、それぞれの魅力について

たっぷりお話を伺いました。


5月29日(日)、ねんてん先生こと、俳人の坪内稔典(つぼうち・としのり)さんをお迎えし、「五七五の今」をテーマに第4回ゆにゼミを開催しました。 第1部は、ねんてん先生のお話。ゆに代表の芳賀博子が聞き手になり、時代が大きく変化する中での五七五の今、また俳句と川柳のそれぞれの魅力や違いについて、興味深いお話をたっぷり伺いました。
たとえば、先生はこれから句会ライブを全国でやろうとお考えだそうで、「俳句の原点は句会。みんなで俳句をつくり、推敲し、鑑賞するのが楽しい。でも、川柳にはそういう句会があまりないといわれるのはなぜだろう」と逆質問。また「俳句は作者が表に出るが、川柳は(発祥からして)作者が表に出ない(流れがある)」や、「川柳は知性でつくるが、俳句は(アタマで考えてというより)感情でつくる」などと話されたのが印象的でした。
さらに「五七五は日本語でつくる最小の詩の形。短いから口ずさんで覚えてもらえる」「ことばは相手が受けとめてはじめて成り立つもの」「ことばは時代の先端にいないと、あまり意味がない。おいしくない」といった五七五に共通する見解も、大変示唆に富むものでした。続く質疑応答も、講師と参加者が画面に並び、Zoomならではのホットな展開に。

第2部は、俳句、川柳のジャンルの垣根を払ってのスペシャル句会です。事前投句の題は「水」。今回は選者お二人の選に加え、ゆにゼミ初の試みとして互選も採用。事前投句された中から、参加した皆さん全員が、それぞれ「心つかまれた句」を2句ずつ選び発表しました。また、選者(ねんてん先生とゆに編集委員・西田雅子)の披講では、両者の選句の違いから、改めて俳句と川柳の違いについて考えることともなり、有意義で刺激的なひとときになりました。

予定の2時間はあっという間。もう少し多くの皆さんと議論したい、そんな名残惜しさを感じながら、皆さんの笑顔をもって閉会となりました。 当日の入選句です。

第4回ゆにゼミ 句会【水】入選句

◆坪内稔典 選
そばかすを褒められた日の水たまり 真島 芽
井戸水の滾々として家じまい 山崎夫美子
水掻くように暮らしてたまに飛行雲 浅井ゆず
噴水になろうひねもす水飲んで 山本純子
水の音たどり仏に会いに行く 林 操
特選
遥かまではつなつの水汲みにゆく 西田雅子
◆西田雅子 選
全身の鍵を外して水中花 須藤しんのすけ
水没をするほど泣いてどうするの 真島久美子
おっちゃんが琵琶湖の水を止めに来る 川田由紀子
青葉風ここ数日は水際に 坪内稔典
水という水が沸騰する怒り 平尾正人
特選
ゆうやけこやけそらみみのれもん水 澤野優美子
【水】 互選
全身の鍵を外して水中花 須藤しんのすけ
水槽の前に母置く母の日の 工藤 惠
五月闇テーブルの上水びたし 河村啓子
そばかすを褒められた日の水たまり 真島 芽
さみだれや一生一句の水の墓 村田素子
遥かまではつなつの水汲みにゆく 西田雅子
水を抜くホタル綺麗と言いながら 重森恒雄
ザブザブの水掛け論をオウム聞く 四ツ屋いずみ
午前九時窓に日本の水平線 坪内稔典
夕焼けに触れたあの日の水ぶくれ 山崎夫美子
飛び込んだ水面にツンとはじかれる 峯島 妙
水没をするほど泣いてどうするの 真島久美子
おっちゃんが琵琶湖の水を止めに来る 川田由紀子
脚注にいのちの水がちょっとある 河野潤々
気づかれぬように手抜きする噴水 浪越靖政
水海月やさしい距離感のトーク 芳賀博子
井戸水の滾々として家じまい 山崎夫美子
水匂う南米の森ひとり飯 朝倉晴美
満水のピアノ都々逸をもらす 河村啓子
水々しい腕むき出しに聖五月 工藤 惠
最後の晩餐薬は水で飲む 河野潤々
どの顔で泣いてもきっと雨の中 須藤しんのすけ
水浴びる母は決まって「ひゃー」と言う 森平洋子
編んでゆく水のことばと木のことば 西田雅子
薬10錠謹みて水を飲む 弘津秋の子
本当が滑ってしまうミズスマシ 峯島 妙
ゆうやけこやけそらみみのれもん水 澤野優美子
窓辺から海辺こころに化粧水 斉尾くにこ
阿吽までもう一歩です水の妻 鈴木厚子
嘱託の机の上の水たまり 重森恒雄
長い旅ようやく水に戻れます 浪越靖政