Vol. 66 風 鈴

 かすかに秋の気配も感じられるこの頃。涼やかな風鈴の音から、そろそろ鈴虫の声にバトンタッチする時期かもしれない。

 風鈴は、中国から伝わった「風鐸」が由来と言われている。唐の時代の中国に「占風鐸」という占いがあり、風鐸という青銅でできた鐘のようなものを竹林に吊るし、風の向きや音の鳴り方で吉凶を占うもの。政治判断などにも使われていた。

 仏教とともに日本に伝わった風鐸。当時、強い風は、流行り病や邪気などの災いを運んでくると考えられていて、風鐸の音が聴こえる範囲は聖域とされ、お寺の軒の四隅に吊るされるようになったそう。青銅製だったので、今とはちがい、やや鈍く重い音だったとか。

 平安時代には、貴族が魔除けとして軒先に吊るしていたそうで、「風鈴」という呼び名は、この頃から使われるようになったとされている。

 江戸時代になると、長崎を通して、西洋のガラスの文化が入り、ガラスの風鈴もつくられた。初期の頃、ガラスは貴重だったため、風鈴も現在の価格で200~300万円もしたと言われている。

 徐々にガラスの価格が下がり、庶民の家の縁側にも吊るされるようになった。暑い時期は伝染病が流行りやすかったことなどから、暑い夏に魔除けの意味もあって飾られたと思われる。

  風鈴も静かになって多数決  亀井 明