Vol. 91 毬

 現在の手毬の遊び方は「衝(つ)く」ことが 主だが、初めの頃は弾む毬がなかったので、投げ合ったり、手で羽根突きのようにして遊んだらしい。

 2つの「まり」の漢字、鞠と毬は、どちらも同じように使われているが、使い分けは遊び方の変遷に由来し、蹴鞠などの7世紀半ば、日本の宮廷文化の遊戯に関連した「まり」を「鞠」とし、「毬」はそれも含め、美しい色の糸で作られた飾り物としての「まり」とする説もある。

 「毬」という漢字は、「毛+求」から成り、毛糸などを求めて一点に集めた「球」を意味することから「毬」という字が成り立ったとされている。

 明治以降、ゴム製の毬が輸入され普及すると、糸手毬は遊具よりはむしろ飾り物や贈り物として重宝される ようになった。女の子が両手で大事そうに手毬を持っている人形があるが、玩具などが少なかった時代、色鮮やかな手毬は少女の宝物だったのではないだろうか。

  毬をつくまだわからぬかわからぬか  松岡瑞枝