底に着くまでの静かな昼下がり
重森恒雄
シンボリックな「底」。
沈むではなく「着く」。
つまり底は目指されている、
あるいは運ばれていく先。
底というとネガティブなニュアンスを湛えつつ、
底に着いてしまえば、それでエンド。
たとえば迷いやためらいからも
やっと解放されるわけで、
落ちていくのは、落ち着き、
受け入れていく過程でもある。
そのゆらゆらとした過程を、
香り高いお茶とともに
ひとりゆったりと味わっているような昼下がり。
日差しもやわらかに、
こんな静かなひとときが
慌ただしい日々にときおり必要で、
とても大切な気がする。
(アンソロジー『輪舞の森ー現代の秀句』
川柳大学 2005)
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