Vol. 111 浴びる 

 朝は小鳥のさえずりで目覚め、窓を開けて朝日をいっぱい浴びて、深呼吸。新しい一日を清々しい気持ちで迎える。これが私の理想的な朝の目覚め方。が、残念ながら、夜型人間としては、今のところ一度も経験したことがなく…。

 「浴びる」の「浴」は、「流れる水」の象形と、「左右に迫る谷」の象形と「たらい(容器―低くくぼんだたらい)」の象形から、たらいに水を注いで「あびる」を意味する「浴」という漢字が成り立った。「ヨク」という音は、谷(コク)→(ヨク)。

 ちなみに、沐浴は、からだを水で洗い潔めること。宗教的な儀式を指すことが多いが、乳児の体を洗うことも含まれる。記録に残る最も古い沐浴の習俗は、古代ギリシャで行われていた「神秘」と呼ばれる神秘主義者達による海での浄化の儀式である。キリスト教では「洗礼」、日本の神道では「禊」と呼ぶなど、宗教ごとに呼び名は異なるが、潔めによって聖と俗との分離をはかる、ということは共通している。

  果実酒を浴びるみたいに 七月の雨  山崎夫美子