今日の一句 #646

聞き慣れた声が酸素になっている
真島久美子


一読、息がラクになった。
共感、というより
私自身が句から届く
「聞き慣れた声」にほっとひと息ついている。


声は酸素であり、呼び水でもあるのかなと思った。
メールやLINEの励ましメッセージも嬉しい。
けれど、なんでもない「元気?」のひと声が呼び水となって
つい封印してしまっていたもやもやが
ふっと胸の外へ排出されていくような感覚。
そのかわりに取り込むのは
もちろんたっぷりの新鮮な酸素だ。
次の一歩へ踏み出すための。


出典は真島久美子氏の新刊句集『恋文』。
川柳一家に育ち、
四歳から作句を始めたという真島氏。

川柳のこれからを担う世代でありつつ、
「卑弥呼の里川柳会代表」をはじめ
川柳界のさまざまな要職を兼任している。
すでにweb版のミニ句集や共著の句集は発行されているけれど、
書籍の個人句集としては、まさに待望の第一句集。


 帰りたいときに帰れという小雨
 トマトより嫌いな人が一人いる
 手招きの前も後ろも蜃気楼
 伝令は風ひたすらに伸びる蔓
 虫かごの中で姉妹の夏動く


恋はもとより、生きることそのものが
如何ともしがたさに満ちている。
それはもう、誰しも。
その如何ともしがたさを
如何ともしがたいままに表現できる川柳の魅力に
改めて感じ入る。
別冊として、丸山芳夫氏氏、月波与生氏、平 川柳氏による
跋文集も編まれ、
こちらも読み応えたっぷり。


(句集『恋文』 真島久美子 私家版 2024) 

   

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