Vol. 206 歯

人の歯も動物の歯も概ね同じ構造を持っていて、門歯(動物の場合、切歯という)、犬歯、前臼歯、後臼歯の4種類がある。漢字の「歯」は人間の歯の象形文字。

甲骨文字の歯は象形で、人の口の中の上下の歯の並びのようである。

のちに、金文では「立ち止まる足」の象形「止」が加わり、読音「シ」を表わし、上下の犬歯を噛みあわせている「歯」の象形と合わせ、「食物を咥えとどめること」を表わすとされている。

人間の歯の治療はかなり古くから行われていたようで、なんと旧石器時代、歯を抜いたり、歯を削ったりする習慣があったらしい。

日本では、701年(大宝元年)わが国最古の法令『大宝律令』や『養老律令』に、医学生の教育内容の中に、耳目口歯科と明記され、耳、目、口、歯は一つの科として医師が行うことになっていた。

 五月来る歯のない口をあけながら  倉本朝世