今日の一句 #697

なわとびに入っておいで出てお行き
時実新子


句集、詩集、評論集など数々の著作ある
「川柳人」編集兼発行人の佐藤岳俊氏に
新たな一冊が加わった。
先ごろ上梓されたばかりの、その名も
『時実新子論』(新葉館出版 1,500円+税)。


本書は「川柳人」に2018年7月から2022年11月まで、

4年にわたって連載された「時実新子論」が書籍化されたもので、
連載中より、さまざまに注目を集めた。
ご存じ佐藤岳俊氏は岩手在住で、
川柳史の研究においても柳界を代表する一人。
時実新子とも交流深く、
本書においても、膨大な資料に裏打ちされた新子論は
はたして、氏ならではの新たな視点で描かれた現代川柳史ともなって
ページを繰るごとに、その時代時代の息吹きが迫りくるよう。


佐藤氏は川柳への功績で、昨年、旭日双光章を受賞。
また「川柳人」は今年創刊100周年を迎え、
8月2日(土)には記念大会として
「「川柳人」創刊100周年 及び 佐藤岳俊川柳碑建立10周年記念
 七夕川柳句会 及び 祝賀会」
が、岩手県奥州市の水沢グランドホテルにて開催される。


さて、掲句は新子の代表作のひとつで、
わらべ唄のように平明ながら
口ずさめば、無常の深さに感じ入る。
去るものにも「出てお行き」と
やわらかなひと声は、これもまた愛なのかと思う。

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