鯉ですが龍にならずに君といる

ちょっとだけ右の小指は嘘が好き

悪だくみ浮かべてすする蜆汁

杉山昌善

ニンゲンも景もない。ただただスマホ

ホラごらん、引くに引けないイランから

そんなに切れたら反ってコワイ、御免する

田尾八女

ひとまずはひとのかたちをしてる影

ひたすらにずれてくずれて葛の花

束の間の晴れ間に欠けたままの月

たかすかまさゆき

使ってない犬小屋がある

ありをりはべりいまそかりすずなすずしろ

まだ上はシーラカンスが泳いでる

田中  赫

指相撲きみが蜂なら痛み分け

受粉とはすなわち風の置き手紙

猛暑とはいがみ合わないセーヌ川

七澤銀河

わ行から始まるおじいちゃんの朝

前世からフンコロガシを引きずって

死んでいるのに番号が剝れない

浪越靖政

みずうみの声で流れるナレーション

クレソンは水の記憶を諳んじる

沈黙の無数の傷を光らせて

西田雅子

猫じゃらし古墳の前の分譲地

ぶよぶよの夢を押し付けあうカウチ

秋の雲写真うつりのいいキリン

芳賀博子

帰路を断ち母との絆強くなる

ある日突然渦中の人となるこの世

雲流れしまい湯流す今日の罪

林 操

痺れたく候う推しの汗が飛ぶ

天は落ち地は割れ人は手をつなぐ

起承転結のどっかが抜けておるんです

飛伝応

誘惑に負けた表面張力の

スマホの中だけで完結する話

「気になる」と微妙に違う「気にする」は

平尾正人

パソコンのストライキお祈りをする

一瞬の行方不明の眼鏡くん

夏昼間枯葉を拾う溝の中

弘津秋の子

アスファルトを行くスカスカになっている

シャボン玉機密情報から飛んだ

それではとポーズ 妖精ずっこける

藤山竜骨

できもしない夢おっかけて八十路過ぎ

感謝感激カアチャンとても気が利くの

馬鹿にするな息子なんかにゃ負けやせぬ

堀本のりひろ

断捨離のためのボックス買いに行く

タコ足の延長コード特殊詐欺

戦争の影を踏まずに生き延びる

峯島 妙

付箋ひんやり香り立つアロマ

満月を滲ませ常世から汽笛

間違ったところへ0と1と0

宮井いずみ

今日という日がお守りになる

騒がしい銀河で見つけあったこと

影すらもあったかいここが帰る場所

本海万里絵

竹箸の帯を外して遅い昼

地熱噴く工事現場の宇宙服

夕風のゼンマイ巻いて花風鈴

森平洋子

何時もより三倍かかり辿り着く

震源地あちこち痛み拡散中

ふふふと笑うスープに入れた隠し味

森 廣子

白バイが待機している夏銀河

絵日記のスイカの種は高く飛ぶ

土踏まず比べて眠る合宿所

山崎夫美子

明るくて真面目な人は私だけ

バケツには売上金があふれてる

当たったら人生変わるはずだった

吉田利秋

カモメの長鳴きで始まる夏休み

ココナッツ・メレンゲに沈める動揺

「昨日ね、」と言いかけたくちゴクラクチョウカ

四ツ屋いずみ

たばこ税払い続けて癌になる

税金を稼ぎに行くと家を出る

生存証明納税証見せる

渡辺かおる

夜明け蓮 準備運動する蕾

誕生をさかのぼろうとして雲になる

夕焼けのこぼれたようなオンコの実

吾亦紅

倦怠に届く白ナス白ゴーヤ

欲しいのは愛ではなくてやさしい雨

今年はもうオハグロトンボ来ないんだ

浅井ゆず

お盆ぼん地元の坊と再婚す

旅はうどんヤドンポケモン鈍行

読経に揃って掛けるハズキルーペ

朝倉晴美

猫とゆく悪役づくし美術展

夏休みに掘った地下室埋め戻す

救急車の色の選択迷い中

石野りこ

カワイイで騙されている人の群れ

地球儀の中の喧嘩が終わらない

急須から落ちる本気のなれの果て

伊藤良彦

髭剃れば鏡の父が目を覚ます

鉾囃子涙をミュートしてしまう

迎え鐘父の名前が空を割る

稲葉良岩

晩夏この洗濯物を放りこむ

乱反射だったかポエムだったのか

めらめらと椰子の木ふうにはびころう

岩田多佳子

合鍵になさいと月のひとかけら

鍵穴は桃の匂いで鍵がない

鍵かけたことも忘れて風を待つ

海野トト

あの病院蝉が鳴いてるいつまでも

ロッカーを開ければいつも夕立が

あの男現住所なら雲の峰

おおさわほてる

シュークリームのとなりで粉砂糖浴びる

口紅を拭えば猛禽の羽音

キャンディもチョコも埋める 咲きなさい

小沢 史

ころんと桃ナマモノ不可の部屋に着く

長い反省コーヒーからクレーム

トンネルを歩くちゃぽんと言ってみる

小原由佳

傷口に沁みる鯨のラブコール

三角波立てて明日がやってくる

夏が逝く七つの海を泡立てて

笠嶋恵美子

三角波きたら答え合わせしよう

無言をつなぐクリームソーダふたつ

やがて美しく離れてゆく線路

桂 晶月

師と仰ぐ本に余力を試される

雨上がり オクラの花に嫌われて

真夏日のピンクッションに錆びた針

金子政子

飛び石がずっと続いて雲に入る

指で裂く水茄子も諦めも

コーヒーもアイスも句読点である

川田由紀子

母胎より特攻として我ら出づ

猫じゃらし少年少女合唱団

ハルカスに串刺しにするおでん種

河村啓子

また晴れたよそのうえ暑い今日はどこ行こ?

もうビール飲んでいい?いいよいくらでも飲みなよありがとな

毎日ポニーテールしかしてあげられなくてなんだかなあ

寒雷

綿菓子の矜持が風に溶けかかる

したたかに減らない消しゴムは嫌い

銅鑼を聞くリール動画の隅っこで

菊池 京

豆の木を登っているのは惹句師で

私にも月の輪がある ドレスアップ

闇は満開 G線上の牛蛙

きくちはるか

初盆のニュアンスカラー咲いたのね

ラベンダー無理をさせててごめんなさい

君の名のハイビスカスと再会す

北川清子

母逝きてくたくたになる秋の茄子

煙突が落ちてデスクが沈む夏

相剋もぽろぽろ溢れ棺閉じる

北 優果

苛立って夾竹桃の赤激し

演目は悲劇わたしはコメディアン

幸せを招く呪文を五百回

黒川佳津子

取説の補足捲れて晩夏光

息抜きのマネキン九月のソナチネ

壁画から捥がれた一房の葡萄

黒田弥生

夏ゆらすこぼれ話の止水栓

引き違い窓の風鈴鳴りやまず

鮮やかな青と会う朝の道端

斉尾くにこ

秋の葉の役に立たないパスワード

掃除するだけの座敷になっている

屋根歪み父の忘れている昨日

重森恒雄

あつあつのうちに星座に変えちゃおう

間違った瓶に間違った炭酸

ママたちが真綿で編んだ蝶番

下野みかも

メリーゴーランド 孤独の記憶めぐりだす

姫君に浴衣を着せて金魚釣り

曖昧のところどころに四分休符

芝岡かんえもん

小魚が群がり骨密度を上げる

チューイングガムも夏休みがほしい

噴水はもう待ち合わす場所でなく

島貫麻衣子

2026年9月の会員作品を読む 「山崎夫美子」

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