ベランダのどのパンジーも破滅型

春分のそこはかとなき手品ショー

ここもまた辺境甘いカプチーノ

芳賀博子

春生まれ花粉飛び交い春の乱

窓際に横一列の傍観者

コーヒーの渦に巻き込むいい話

林 操

プライドがごめんごめんと袖をひく

出る杭になれと師匠は言い残し

立ち食いに邪魔なプライド打ち首に

飛伝応

この部屋の隅が私のいる現場

多様性とは何ですかいちごパフェ

表裏あってビールとハイボール

平尾正人

無理ですよ一人外出鴉の目

突然に縮んでゆくんだなあ頭脳

長生きのチケット背中のサロンパス

弘津秋の子

津軽弁少し練習して津軽

梅食べて梅ばあさんはここにあり

竜が今 天を仰ぐと龍の道

藤山竜骨

音楽の先生いつも夢見がち

曲がるたびまあるくなっていく言葉

ワンさんはきっとあの娘に会いに来る

峯島 妙

‘Ohanaとは愛とは ほうじ茶の旨さ

日にいちど笑っていいよ台布巾

大寒波なっとう二十回まぜる

宮井いずみ

バカやって終わろそうだなサンバとか

からだひとつあるものだけでやっていく

滅亡するねほらアイスでも食べよっか

本海万里絵

寒紅梅まじろぎもせず見る空は

のど飴ののどに届かぬ焼け野原

笑ったり泣いたり唐辛子追加

森平洋子

白鳥に成れずに飛べずのアヒルの子

郭公の托卵既にバレている

胸の奥耳の深くに残る声

森 廣子

君の名のシンメトリーが呼びかける

介錯はいらないストリートピアノ

森はまだ冬のシールを剥がせない

山崎夫美子

空席がわらえば列が消えるけど

退学のあとの廊下をなめる犬

七人目だけがしろいとひらく春

山本絲人

おばさんの趣味はオセロと西部劇

大雪にずっと待ってた停留所

バス運休知らずに待った半時間

吉田利秋

迷信はどうでもいいや夜の爪切り

15までなぞり安心する鼓動

ウフウフと笑い出す雪原 2月

四ツ屋いずみ

鉄人に拍手している新長田

鉄人様 スタンディングオベーション

母を看る わたくしと対話している

渡辺かおる

雨風に打たれて雪に抱かれて

捨て方の作法 微に入り雪に入り

雪晴れ間 あっ大根が息してる

吾亦紅

ガムテープ剥がせば春の顔覗く

草木にも冷蔵庫にも手を合わす

なだらかを目指せば神は怒らない

浅井ゆず

春の喜怒みんなしじみの殻の内

主体性って何よ僕私俺

二月尽銀行跡地ローソンへ

朝倉晴美

雛祭り部長に話しかけてみる

食パンに収まっている丸い窓

荒っぽい暮らしの中の金魚様

石野りこ

土曜日は大学芋とたわむれる

鯛焼きの尻尾の色が気になって

どら焼きの銅鑼を鳴らしてみましょうよ

伊藤良彦

名言がこっちを向いて睨んでる

凪の朝開花予報は闇の中

凍蝶の鼓動が闇で再起動

稲葉良岩

ビー玉は一番星を離さない

躑躅でも姉でもなくて赤かった

先人のカップの取っ手かもしれん

岩田多佳子

前髪の長さ決めかね雪の嵩

眠ってはならぬ老いも若きも筋トレす

面倒をみるよと蘭に囁いて

海野エリー

雪は降る背中のシーラカンス泣く

足元の昨日のぼくと春を待つ

春風が言葉になってやって来た

おおさわほてる

大寒波キリンの首がだるそうだ

嫌いだな土足で降ってくる雪は

トンビにも素数をひとつ投げてやる

大竹明日香

祖母の指環母の指環と水になる

滲ませてしまう腎臓水銀灯

暖をとる全身に蝶群がらせ

小沢 史

挨拶してくる瑞々しい刃物

正しさはそんな顔しておりません

泣いてると仮定して見る後頭部

小原由佳

火渡りや山中に法螺鳴り響く

燻されて嗄れ声の寒鴉

不動にんまり弛む凍天

笠嶋恵美子

お別れの言葉をオレンジで染める

どこでもドアがある午後の古本屋

半分と折り合った上弦の月

桂 晶月

ヴィヴァルディの春だ大人の吹き出物

ぷわぁーと夫ひやぁーと私みゃーと猫

撤収と叫び深追いせぬことに

川田由紀子

どの闇をくぐり鰯の目に泪

降りそそぐとっても温い土団子

集落にある必然と偶然と

河村啓子

ひとつ 深夜と早朝の隙間まで手をつないでてさ

ふたつ ほんの1センチもない距離にキミの笑顔が

みっつ 柔らかくてあたたかくてでもすぐ消えそうほら

寒雷

寒いちご指紋の溝を黙らせる

雪の縞いずれは川になる話

風を聴きたし越冬の毛糸玉

菊池 京

二ン月の鬼門も過ぎて拭くガラス

ヤブサメのシシシシシシシ干すシーツ

二人しておむすび結び菫野へ

北川清子

欠点も長所も打たれ強いこと

支持率アップ狙い今夜はハンバーグ

覗いたらわっと笑顔が飛び出した

黒川佳津子

白蝶の不満噴出 舞台暗転 

うっかりと飲み干す春の発泡酒

鳥雲にザラメ夥しく焦がす

黒田弥生

資本主義終えて整うセルフ油脂

舌の根に余る非必須アミノ酸

5歳から飲んでる顔で口説くなよ

河野潤々

芽吹きだす冬から春のほとりから

またたきははるか本質を捉えて

えんぴつは飛びたい意味の無い世界

斉尾くにこ

黙ったままが二階から降りてくる

マフラーが絡みつく夜の北斗星

また出会う猫の病を知っている

重森恒雄

晩年は記号になって生きようよ

ベロは純情 舌は時々嘘をつく

黄昏にとても見事なうっちゃりを

芝岡かんえもん

指揮棒へ変わる五歳のうまい棒

シャツ出して駆けるトイレのスーパーマン

空白は必死の跡育児日記

島貫麻衣子

石鹸の泡とあんたは置いてくる

咳の身を隠す 積乱雲の中

鬼が来る 隣の席は自由席

杉山昌善

一生涯かけてあつめた灰でした

囀ればいつかは風になれるはず

うららかにかすかにかなしみはみちて

たかすかまさゆき

破裂音 五臓六腑のここかしこ

リベンジをミートボールに詰めておく

地上波に帰るとさくらさくら さくら

浪越靖政

春だから名もなき夢の散らし書き

架空から零れつづける砂時計

あれこれをかき混ぜつくる春の論

西田雅子

お互いさまと木枯らしに出すハーブティ

記憶の森はげしく壊す日曜日

龍頭巻く父の時間は後わずか

西山奈津実

2026年3月の会員作品を読む 「芳賀博子」

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