めぇーと鳴く今日のオセロの白になる

古希喜寿傘寿 手ごねの蕎麦になっていく

退屈の海が溢れちまっている

芝岡かんえもん

白黒のコンソメパンチと紅葉狩り

ぽこぽこと見上げれば満月の息

コンパスの針が逃げ道探してる

島貫麻衣子

酷暑日のTシャツ 北斎のブルー

私を救ってくれぬ流星雨

気がつけば太平洋の水すまし

杉山昌善

キホンのキです。ソノキのキヤルキのキ

気配りが過ぎて寝た子を起こすまい

ちと大き目にちと少なめがコツである

田尾八女

出た声とちがうかたちに散るもみじ

本を読む景色を折りたたむように

迷子になって帰っておいで

たかすかまさゆき

色盲にあじさいのことそっと告ぐ

ガリレオの丈夫なブーツが欲しいねん

カナヅチのバジャウがいるとかいないとか

田中  赫

不揃いの栗が叩いたタンバリン

すみやかに記憶を焼いたオーブンで

全盲の天使が胸に灯すベル

七澤銀河

ぺたぺたと半額シール男の背

あれこれは喫煙室に捨ててきた

誤作動にまだ気づかずに走ってる

浪越靖政

校庭の秋の陽射しへ出す手紙

果樹園の風を流れてくる事件

思い出が坐りなおしている気配

西田雅子

ペディキュアを鶸色にしてもう旅情

帳尻を合わせるための柚子バター

釣鐘を一つ撞かせてもらい風

芳賀博子

香草の苦手な君に秋が来た

もう少し寿命いただく秋まつり

新しい語彙入れるためもの忘れ

林 操

手の届く範囲で愛は語るべし

情報が洩れて私は薄くなる

漏洩を逃れ実家は朽ちるのみ

飛伝応

動かないでいるうち動けなくなった

食卓に差別用語と卵とじ

書きかけの文字が途方に暮れている

平尾正人

立ち話明るく光る秋の塀

ウオーキングゆるんだままの指十本

笑いあう四尺玉の大花火

弘津秋の子

名月を弾く警備員のピアス

観客はまばら うねっている太鼓

影として立って秋日がやわらかい

藤山竜骨

いざという時頼りにならぬ我が息子

この椅子から俺を蹴落とす奴は誰

我妻にひとにらみされシュンとなる

堀本のりひろ

ほらそこに小さな秋がくる気配

わくわくがト音記号で跳ねてくる

故郷の等高線の土砂崩れ

峯島 妙

目の前で揺れるチャームやひよこの手

不意打ちのエリンギ帰らない木霊

黄昏の革命まるめろはジャムに

宮井いずみ

ぶかっこうなお菓子持ち寄ったりしてさ

好きな服着て今日もお祭りにする

ふっと出た言葉が美しいといい

本海万里絵

蟷螂の照れると眉をさわる癖

半額のお団子二つ月二つ

探照灯雨止んでまた雨の降る

森平洋子

古寺を巡るつやつやの柿笑う

思ったよりは花火大会あっけない

平和を叫ぶ 鉛筆がちびて行く

森 廣子

解体の櫓にうずくまる晩夏

花梨酒の蓋がたやすく弱音吐く

方舟にAIだけが乗っている

山崎夫美子

たましいが抜けてしまって秋になる

脳みそを耕してくれトラクター

週二回にデイの体操増やす秋

吉田利秋

良夜にてあえて取り出す紙の本

40年染み出てくるわ同期会

濡れ落ち葉香る フェードアウト加速

四ツ屋いずみ

命のみ残る断捨離完了日

非日常たまには犬とプチ家出

芭蕉の句こころに過ぎる車中泊

渡辺かおる

手のひらの海に溺れている予定

ジャンルなど無かった大地夕焼ける

言葉から生まれこの世をつなぐ月

吾亦紅

AIの暴走神の意思なのか

カタカタからガタガタまでは一瞬よ

赤まんまただ濡れそぼつしかなくて

浅井ゆず

さぁゆくぜ秋の天辺海の天辺

天窓を開いて秋のオレを呼べ

天窓も閉じて居留守の秋日和

朝倉晴美

あの時に油がハネた跡である

カラスのせ電信柱深呼吸

太陽はポカンと口を開けている

石野りこ

収穫の秋は被災地にもあった

牧草の中で昼寝をする仕事

潔く散った紅葉はゴミじゃない

伊藤良彦

柿ひとつ残し実家を売りに出す

ため息をつくたび猫が席替える

たわごとが増えてプリンは固まった

稲葉良岩

背景にわたしの右手映す瓶

ポケットという名の風の燻製器

まぁまぁの丸がボソッと空に照る

岩田多佳子

卑怯者です青空を見ています

トリカブトくれた景品交換所

まなざしが触手となって恋熟れる

海野トト

露草を摘み取るように抱いて君

さよならは露草代わりに言うだろう

月光よ生まれ変わりは地球人

おおさわほてる

泡立草か手術痕か当てなさい

胎内でしれっとつける泣きぼくろ

水抜きの終った爪を持ち帰る

小沢 史

ソーダ水一期一会の流れ出す

入れ違うビニールの息紙の息

行間にチョコを並べて読み直す

小原由佳

ピリオドにためらい傷が二つある

柔軟剤に浸しやさしさとり戻す

熟柿吸うこの世の果てを見た顔で

笠嶋恵美子

見えない対岸に投げてみたロープ

ゆっくりと浸食企てるボタン

エンドロールを泳ぐヒロインのまま

桂 晶月

青い空一人仕事を見るとんぼ

四季バラが約束通り顔を出す

だとしても冷えれば味は染みてくる

金子政子

妖怪図開いてフィッシュ&チップス

風船の中で見つけたお友達 

ぐっと手を握り返してくる世界

川田由紀子

アケビの実バイリンガルな姉に似て

婚姻の狭い出口か指貫か

親泣いて子も泣いているねこじゃらし

河村啓子

トリセツのない台形の好事癖

ザクロ割る伏せた目元が語るもの

禅問答終い忘れの風鈴と

菊池 京

更年期太りにピンクの処方箋

困り事ありませんかと秋の椅子

青空のかけらをひとつ手放すわ

きくちはるか

二人して天城を越えて昇る天

天高くでも痩せて行く身ひとつ

ひとつなら分けてもいいね旅二人

北川清子

秋の風炭酸水の気が抜ける

食卓が四角くなって今年米

触れない大和魂今年米

北 優果

金木犀呼び合うように駅の道

言うべきもするべきもあり曼殊沙華

行先は決めずふわふわシャボン玉

黒川佳津子

八頭身の菊人形と月の下

夕映えにバーガンディーのカーディガン

穂芒が銀に靡けば組曲に

黒田弥生

ひと勝負鉄のお玉と中華鍋

頷けばプリンにフォーク付いてくる

黙読の露草ふっと半笑い

斉尾くにこ

美しい紐で括っておく鎖骨

階段の二段目からの骨密度

隙間から見える福井の露天風呂

重森恒雄

押し入れであなたわたしが踊る声

ふわふわのお寿司になったばあちゃんち

おしまいに蟹のこころも食べ尽くす

下野みかも

2026年11月の会員作品を読む 「森平洋子」

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